バイクに乗って探します

趣味のバイクを中心として、仕事や何かへの挑戦等、その時々に興味や関心を寄せている事柄をテーマにする雑記帳です。また、バイクに乗る幸せを通じて、人生の幸せを探せる可能性を探ってみたいと思います。

読書と企業と市場と

さて私、投資関連の職に従事しております。
実物・現物資産を投資対象としており、時にM&Aなどにも絡みます。

また、読書の虫でもあり、企業小説は学生時代から好むジャンルの筆頭でした。


日本のように、企業の存続にこそ大きな価値を見出だす経営を「企業制度説」と呼び、倒産は経営において最大の失敗であると考えます。

他方、米国のように、企業とは投資家・株主が利益を得るための用具だとする企業観は、「企業用具説」と呼ばれます。
ここでは、企業が利益を生める間はそれを投資家に配分し、それが不可能であるならば市場から退場すべきであると考えられていますので、企業の倒産を深刻な問題とは捉えません。

衰退にさらされた企業を存続させようとするくらいならば、その為の
「コスト」は株主への還元に、
「努力」は企業の新設や優良企業の更なる向上に、
それぞれを向けるべきであり、
また、衰退しつつある企業が、関連分野において技術など経営資源の応用を図るよりも、それを倒産等により社会に放出・還元する事で、より高収益の機会を見出だすべきであると考えます。

雇用に対する姿勢にも、二つの説の違いは色濃く反映されていますね。


この背景を踏まえた上で、コダックをモデルとした企業小説、「象の墓場」を読んで。
http://kazebike.hatenablog.com/entry/2016/05/16/211309


写真フィルムメーカーとして、世界において圧倒的トップシェアを誇った米国のコダック

小説によると、フィルムの製造、現像、プリントと何重にも利益を生むそのビジネススキームにより、世界の超優良企業として、長きにわたりこの世の春を謳歌していたそうです。

しかし、デジタル技術の台頭によるフィルム関連事業の近未来の衰退をいち早く察知。
企業の生き残りを賭け、世界に先駆けてデジカメを開発したり、製薬会社を買収したり。

しかし、ここで企業用具説に基づく株主が行く手を阻み、コダックは近未来を予見し、それに基づく対応や「努力」にも着手していながら、敢えなく倒産。


対して富士フイルム
フィルム製造技術の応用による化粧品や健康食品の開発は、有名な逸話ですね。

その他、企業の再構築・改革等、血の滲むような「努力」により、以前にも増す売上を誇る企業として生き残りました。


コダック富士フイルムが辿った結果の差は、企業体質によるものと言うより、所在国における市場体質の差によったと言えるのでしょう。

二つの市場体質、その善し悪しそのものを判断する事は、一概には出来ませんけどね。


また報告します。